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推進委員コラム

グッドキャリア実現に向けた
3つのハードルの超え方を考える

法政大学教授 坂爪洋美 委員

あなた(の会社の従業員)のキャリアはグッドキャリアですか?

 皆さんは、「ご自身のキャリアをグッドキャリアだと言い切れますか?」と問われたら何と答えるだろうか。同様に、「あなたの会社の従業員は、グッドキャリアを実現していますか?」と問われたら何と答えるだろうか。冒頭から意地の悪い問いで申し訳ない。このコラムは「逡巡してもなお、『う~ん』と迷う」方、「『はい』と言えるような気もするけど、でも・・と躊躇する」方、「グッドキャリアなんて無理」とあきらめている方に向けて書いている。つまり、「はい」と即答した方以外の全ての方に向けて書いている。

「グッドキャリア?」という問いの最初のハードル:
現状がわからない

 冒頭の問いに答えるために唯一の前提は「自分のキャリア」もしくは「自分の会社でのキャリア形成」について整理・理解できていることである。つまり「私のキャリアの現状はどうなのか」「うちの従業員のキャリア形成の現状はどうなっているのか」を知っていることが必要である。もし、皆さんが回答に躊躇した理由が「よくわからない」ということであれば、グッドかどうかは気にせず、まずは現状を振り返り、確認することからはじめよう。グッドキャリアの第1歩は現状を知ることにあり、現状を知ることに実は大きな意義がある。さらに現状を知って初めて「グッドかどうか」が判断できる。私達は日常に忙殺されて、知っているようで案外現状を知らないものだ。

「グッドキャリア?」という問いの2つ目のハードル:
「グッド」かどうか判断できない

 冒頭の問いの難しさは「グッド」という言葉にある。「何がグッドかわからない」「グッドか否かを判断する基準がわからない」等、グッドを巡り疑問を持つ方がいるだろう。この疑問に対する私の答えは「あなたにとってのグッドは何か?」という問いである。疑問に対して問いで返して申し訳ないが、このハードルを越える鍵は「グッドという言葉を自分(自社)なりに言い換える」ことにあると考える。もちろん答えは個人(会社)ごとに違って構わない。

「グッド」という言葉を言い換える意義

 言い換えることのメリットは2つある。第1に、自分(自社)が実現可能な「グッド」を考えることで、「絵に描いた餅」ではない手が届く、自分(自社)にフィットした「グッド」が明らかになることである。第2に、「グッド」という言葉の呪縛から逃れられることである。「グッドキャリア」を「良いキャリア」と読んでしまうと、「いつも満足している」「周囲からすごいと言われる」という印象を持ちがちだ。しかし「いつも自分のキャリアに満足している」ことは現実的に不可能だ。「グッドキャリア」という言葉は目指すゴールを示す上では最適だが、もしこの言葉が思考の範囲をせばめているのであれば、言い換えることが思考をより柔軟にするきっかけとなる。

「グッドキャリア?」という問いの3つ目のハードル:
グッドキャリアと言われても

 最後に、冒頭の質問自体に引っかかりを覚えるというハードルに触れておきたい。これまでにグッドキャリアに向けて取組んできた方が、より冒頭の質問に引っかかりを感じるのではないだろうか。例えば、「色々取り組んできたが、自分のキャリアをより良いものにしたいという意識の高い従業員はあまりいない」「そもそも人はそんなにキャリアに興味がない」というあきらめにも似た心境にある方だ。

従業員を大事にしているか

 皆さんの会社は従業員を大事にしているだろうか。「大事」を「尊重」に置き換えてもいい。私はグッドキャリア実現の第1歩目は会社が従業員を大事にすることだと考える。人は会社に大事にされて初めてキャリアに前向きになると考えるからである。この「大事にする」という部分が抜け落ちた状態でのグッドキャリアの推進は、非常にもろい土台の上であやういバランスを保ちながら進むことになり、取組んでみたものの成果につながらないリスクを高める。取組めば取組むほど課題は出てくるのも現実である。その課題にどう対処するかを考えると同時に、自社の土台の部分にも目を向けてみてはどうだろうか。

グッドであろうというプロセスの大切さ

 「グッドキャリアを実現することはとても大事だが、『グッドキャリア』という言葉が、ご自身や自社の従業員のキャリア形成に関わる皆さんのハードルを知らず知らずのうちに上げてはいないだろうか」そんな疑問がこのコラム執筆の源泉だ。グッドキャリアの実現は容易ではない。人生は山あり谷あり、企業も山あり谷ありである。その中でグッドキャリアを実現するとは、従業員を尊重する(個人から見れば、従業員を大事にする会社で働く)という土台を築いた上で、実現可能な「グッド」を見出し、グッドであろうと行動することだ。このコラムが「そうか、やってみよう」と思うきっかけとなれば幸いである。